日経電子版の価格戦略を考えてみた

2011年8月23日

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ビープラッツの篠崎です。

日経の電子版は今月3日の発表で会員数100万人に対して、有料会員は14万人強になったそうです。(日本経済新聞社のプレスリリース)

一方で、解約率は5%とのことで、毎月8000人が解約とのこと。(東京IT新聞)

このリリースには、「紙面とオンラインの併用という新しい新聞の読み方が定着してきている」
と日経はリリースにコメントを入れていますが、本当にそうでしょうか。

確かに電子版の読者は増えているものの、併用を望んでいるかどうかは別で、モノは言いようとはまさにこのことで、今の売り方の限界が早くも近づいている、と言えるのかと。

◆解約率が高いこと
→こんなに解約率が続けば、新規増の勢いを解約数がすぐ追い越す。つまり電子会員の増加は見込めない状況が早晩来る。頭打ち。

◆併用自体は読者が望んでいるわけではなく、日経の売り方(値付け)により仕方なく選択している
というのが実情。

日経の紙面発行部数は300万で、これは各家庭向け発行と事業者向け発行数だけではなく、駅の売店などで陳列されたまま廃棄する数も含めての数だと思うので、少なく見積もって10%を差し引いたとしても、有効紙面発行数は270万と言えると思います。(実際は廃棄がもっと多く、より少ないかと)
ある意味、この270万が、「日経を紙かオンラインかに関わらず有料で読んでもらえる母数」であり、紙面か電子版かは無関係。この270万の母数をどういう売上構成にするのかが日経が抱えている本質的な問題で、このうちわずか14万人が日経が設定した「電子版プレミアム」に同意して有料会員になったわけですが、この「電子版プレミアム」は、早晩機能しなくなるだろうと思っています。

紙面と電子版の価格をそれぞれ確認してみると;
◆紙面は朝・夕セットで4,383円
◆電子版はこれに対して4,000円(その差383円)
◆紙面購読者のセット売りは+1,000円で5,383円。

今のところ、電子版には紙面とは別に値付けがなされていて、この価格設定は、有る程度電子版を別売りにしてプレミアム化させることにより、プレミアム売上を取れる期間だけ取ろうという日経の思惑が働いていると思います。

ただこの「電子版プレミアム」は、暫定期間での値付けとしてしか機能しない、と思います。
◆そもそも電子版は紙面の焼き直しで同じコンテンツであり、差別化ポイントはほぼ無い。(モバイル端末から読めるという差別化は、日経が提供しているものではなく、デバイスが提供しているもの)
◆電子版での会員数売上はプレミアムである限り一定の数から伸びない
◆紙面売上も若者の新聞離れなどから低減する
これらの理由から、日経は紙面だろうが電子版だろうが、これらを同じコンテンツで販売している今の売り方を変えていくことが求められるだろうと思っています。

紙面と電子版のコストの違いは
紙面>電子版:
(本来の記事の価値+印刷代+紙代+配送代)>(本来の記事内容の価値+電子配信にかかるコスト)
ではありますが、コスト構造は価格設定にはあまり影響を与えていないと思われます。
むしろ、上述した暫定期間のプレミアムの思惑と、紙面売上を守らなければならないなどのネガティブな要因が働いて今の値付けになっているんだろうと思います。

電子版の価格にあえてプレミアムを付けているネガティブな理由:
・電子版を下げると紙面売上が落ちる。既存の紙面の価格(売上)は動かせない。
・市場背景に、新聞離れ(特に若者)と各種メディアの台頭がある。
・徐々に紙媒体の新聞売上は減少傾向にある。
・この減少傾向の速度を鈍化させなければならない。

電子版は別で値付け販売。

というのが背景。

では、今後、日経の紙面及び電子版の価格はどうなるか?
と、
これらの新聞事業が電子配信されるモデルとして、どう変わっていくべきか?
ですが、

前者については今の有料(優良!?)記事提供のモデルを続ける限りにおいては、
◆電子版の売上もすぐ頭打ちになる
◆紙面売上も若者の新聞離れなどから低減する
ために、紙面と電子版の価格差は無くなっていくだろうと思います。
紙面と電子版のコンテンツで同じものを提供する限りにおいては。

そもそも「電子版」といって、なぜ同じ記事を焼き直して配信しなおすだけのモデルにしているのか、理解に苦しみます。
サービスモデルを変えるいい機会なのに、今の新聞各社は、紙に起こした記事を電子フォーマットに変換し直しているだけです。
読者から見たら、読む手段が変わっているだけで、本質は何も変わっていません。

さらに、この「紙面も電子版も同価格になる」な状況の先には、
・紙面売上は将来間違いなく下がり採算はさらに悪化する
・電子版が持つ優位な特性から、電子版を優先しなければならないタイミングが来る
はずです。

そもそも電子版が持つ本来の優位性とは;
◆価格戦略がそもそも多様性を持つ
切り売り(時間も中身も)、セット売りなども可能になる。
とか、

◆読者に向けたターゲット広告配信などによる広告収益モデルも多様化できる
今の一律同一内容の広告配信ではなく、コンテンツや読者属性に合わせた配信も可能になるとか、

◆差別化された商品(情報)販売ももっとできるようになる
電子版を開く時間にタイムリーなニュース配信を行えることや、
地理特性を生かした情報提供や、
読者の属性に合わせてプレミアムを付けた情報提供も可能になる
とか、いろいろあるはずです。

これらの電子版のテクノロジー優位性を活かして収益の多様化に取り組むことが求められるだろう、と思っています。

というか、そう願っています。

日経に限らず、朝日新聞もウォールストリートジャーナルも、販売店の収益確保とか反発とか、デジタルシフトが云々という以前に、この電子版による技術特性をどう生かして戦略を描くかがキモなはず。

従量課金やサービスの多様化を是非とも検討願いたいです。

ではまた。
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